優美舎では、新年最初の稽古として「大筆大会」を毎年1月上旬に開催しています。
優美舎の大筆大会では、普段の稽古ではできない体験をすることができます。
- 普段は使わない種類の筆を使う
- 大きい紙に書く
- 墨(すみ)をする
- 手本なしで自分が選んだ言葉を書く
- それぞれの塾生が書いた作品を鑑賞する
といった内容を盛り込んだ、毎年塾生が楽しみにしている恒例行事です。
2020年の大筆大会は、1月11日(土)に、2部に分けて行いました。
今回はその中の1部を取り上げ、優美舎ならではの大筆大会を紹介していきます。
書く環境を整える
優美舎の「大筆大会」では、実際に大筆を使って書く前に、使う筆や道具の説明を行い、理解を深める時間を設けています。
はじめに、全員で新年の挨拶をします。
筆についての説明
まず、この大筆大会の目玉ともいえる「筆」についての紹介から始まります。
大筆大会では、4種類の筆を用意しています。
一般的に「大筆」と呼ばれている太い筆は、柔らかい「羊毛(ようもう)」のものと、硬めの「毫毛(ごうもう)」の2本を使います。
さらに、筆の毛の部分「穂」が長いという特徴がある「長々鋒(ちょうちょうほう)」を2本用意しています。
塾生はこの4種類の全く違う筆を使って書くことができるという、興味深い体験をすることになります。
普段はなかなか使う機会がない筆を使うことで、新年最初の書を新鮮な気持ちで楽しむことができるのです。
墨についての説明
また、墨の種類も違うものを用意しています。
長々鋒の筆で書くための墨は、塾生自身が硯(すずり)を使ってすります。
する墨は「緑墨(りょくぼく)」と「茶墨(ちゃぼく)」の2種類を用意しています。
名前の通り、この墨をすると、緑墨は緑の色、茶墨は茶の色がかすかに現れます。
硯(すずり)についての説明
また、墨をするための硯(すずり)も普段の稽古では使わない「円硯(えんけん)」を使用します。
今では「墨汁(ぼくじゅう)」が簡単に手に入りますが、昔はそんな便利なものはなかったので、大きな作品を書くためには墨をたくさんすらなければなりませんでした。
そんなときに使われていたのが、この円硯です。
墨をする
大筆大会で使う道具の説明を受けた後、塾生たちは墨をすっていきます。
人数分の墨をするため、2人1組になって20回ずつすっていき、その都度、指導者が墨の濃さをチェックします。
だんだん緑と茶の色がしっかりと出てきました。
大筆で書く
ここからは実際に大筆で書く時間に入ります。
大筆大会に参加する塾生は、4種類の筆を1回ずつ使い、全部で4回書きます。
書く言葉は自由なので、それぞれが事前に何を書くかを決めて参加しています。
太い筆2本では、墨汁の真っ黒な墨を使って4文字以内の短い言葉を書きます。
細かい字が書ける穂先の長い筆2本では、2種類のすった墨を使って5文字以上の言葉を書きます。
まずは、指導者が実際に書いて見せます。
筆の使い方だけでなく、
- 中心に膝をついて紙を安定させること
- 移動するときに墨で水分を含んだ紙が破れないように膝の動かし方に気をつけること
など、正しい姿勢についての説明もあります。
塾生は、指導者がそれぞれ違う筆と墨で書いているところを見ることができます。
こうしてじっくりと書いているところを見ることで、それぞれ違う筆をどのように持って動かせばいいのか、目で確認することができます。
このような流れを終えて、ついに塾生たちが書く番です。
書くときは、塾生同士で硯を書きやすい位置に動かしたり、吸い取り紙で余分な墨を吸い取ったり、書いた紙を移動して新しい紙を並べたりなどのサポートをしあいます。
このように助けあうことで、参加者全員が余裕を持って、時間内に集中して4回の書を楽しめるのです。
作品を鑑賞する
全員が書き終わったら、残りの時間はお茶を飲みながら、書いた作品をボードに並べて鑑賞会をします。
一人一人が作品への思いをお話しすることで、それぞれの塾生やその作品に対する理解を深めることができますし、違った目標や夢を持った塾生同士、いい刺激を受けることもできます。
この大筆大会は、稽古時間が違ったり、個人稽古を受けていたりなどの理由で普段は顔を合わせることのない塾生たちが交流できる貴重な機会でもあるのです。
今回も皆さん、新年の目標を書いたり、映画や歌から好きな言葉を引用したりなど、一人一人それぞれの個性がしっかり出た素晴らしい作品が並びました。
「大筆大会」を終えて
優美舎の大筆大会は、新年最初の稽古です。
大筆大会に参加する皆さんは、最初は「他の塾生が見ている中で集中して書けるか不安」「人に作品を観られるのが恥ずかしい」という不安を抱く方もいます。
しかし、終わってみると「とても楽しかった」と、最初に抱えていた不安もすっかり消えています。
また、長い間優美舎に通い続けている塾生たちは、毎年の大筆大会の場で、手本を見なくても字が確実に上達しているということをしっかりと確認できます。
年のはじめに、何を書きたいか考え、集中して墨をすり、大きな筆で気持ちを込めて自分の決めた言葉を書く。そうすることで自信もつき、前向きに新年の書道生活をスタートすることができるのです。
2020年、塾生たちがそれぞれの目標に向かって進んでいく姿がとても楽しみです。