書道師範を取りたいと思っているあなたへ、師範になるにはどうしたらいいのか、書道師範の現状も含めて具体的に解説していきます。
- 「書道師範ってどんな資格…?」
- 「段位を取れば師範になれるの…?」
- 「書道師範の人でも、ペン字は意外と下手に見えるような…?」
こんな疑問にもお答えしていきますね。
書道師範に興味があれば、ぜひ最後まで読み進めてみてください。
「師範」と言われた瞬間から書道師範を名乗れる
まずそもそもの話ですが、師範というものは公的な資格ではなく、所属している書道教室や書道会、そして教えてもらっている書道師範(先生)によって与えられるものです。
「はい、じゃああなたは今日から師範ね」と先生から認定されれば、それで師範を名乗れるようになるわけです。
つまり、あなたが書道師範になれるかどうかは、あなたが教えてもらっている先生の裁量によって、だいたい決まってしまうのです。
書道には統一された資格や検定というものが存在しません。もちろん、一部の人しか通れないような国家資格でもありません。
なぜなら、日本にはいくつもの書道会や書道団体が点在し、それぞれの会によっての検定が定められており、それぞれ基準が違うからです。
書道師範になるための検定等は会が独自で行うため、世の中には本当にいろいろな種類の「書道師範になる基準」があるわけです。
そしてその基準というのも一定ではなく、往々にして曖昧なものが多いです。
- 「このくらい書ければ1級」
- 「このくらい書ければ初段」
といった感じで、「このくらい」で表現されているのが現状。そのため、曖昧かつ主観的な表現で師範認定されてしまう検定が多くあるのです。
書道師範として教えるべき「文字の完成形」がわかりにくい
「師範」とは教えられる人のことですが、文字を教えるのはとても難しいことです。
なぜなら、書道師範が教えるべき「文字の完成形」というものが決まっていないためです。
たとえば、漢数字「三」という字をきれいに書きたいとします。
すると、だいたい以下のようにポイントを教えられるのではないでしょうか。
- 一画目は少し右上がりに書く
- 二画目は一画目よりも少し短く書く
- 三画目は一画目よりも長く、下へ反るように書く
しかし、実はこれらのポイントというのはとても抽象的に表現されています。
- 一画目は少し右上がりに書く⇒といっても、どのくらい傾斜するのか?また長さはどれくらい?
- 二画目は一画目よりも少し短く書く⇒といっても、その長さの差は?比率はどのくらい?
- 三画目は一画目よりも長く、下へ反るように書く⇒といっても、どのくらい長く?どれくらい反るの?
と、よくよく考えてみるとわからないことばかり。
人によってポイントの解釈が異なり、文字に差が生まれてしまうのです。
以下の画像を見てみてください。
①この形を基本形とします。
②少し長さと傾斜の角度が変わります。
③一画ごとの間隔が変わります。
④一画、二画の傾斜が変わります。
⑤始筆の角度、筆づかいが変わります。
という具合に、どれも書き方は間違ってはいないことになりますが、見た目の印象はまったく違うものになります。
- 長さが少し違えば…
- 傾斜が少し違えば…
- 反り方が少し違えば…
この「少し」のズレがバランスをくずし、手本とは違って見えてしまうんですね。
そして、この違いを相手に伝えるのは本当に難しいこと。
指導している際には、師範が頭の中に正しい文字の完成形を瞬時にイメージし、目の前に書かれた文字との違いを明確に指摘しなければいけません。
つまり、文字の完成形を自分の中でハッキリさせることが、書道師範になるためには必要不可欠なポイントになります。
当たり前のことのように思えるのですが、これが従来の書道においてないがしろにされてきている部分でもあります。
そのため、書道師範という資格を持っていても、自信が持てずに悩んでしまうことも。
「書けない…」「教えられない…」という事態に陥ってしまい、自分の持つ師範という資格に疑問を抱いてしまう方も多くいらっしゃいます。
書道師範なのに下手だと悩んでしまう
私はこれまでに、
- 「師範を取得しているのに教え方がわからない」
- 「師範ですが、小筆は自分の名前を書くくらいしか習っていない」
- 「師範なのに、ペン字は下手」
- 「昇段、昇級する(しない)理由がわからない」
という悩みを、非常に多くの人から受けてきました。
そしてかくいう私自身も、昔はこのような悩みを抱えていました。書道の経歴を持つ方なら、共感されるところが多いのではないでしょうか。
書道教室に真面目に通い、提供された手本を写して師範を取得しても、何年経っても自信が持てないのが現状です。それはひとえに、文字の完成形がわかりにくいことが原因なのです。
絵画ではりんごを描くとき、実物のりんごと比べて違いがわかります。風景画でも、目の前に広がる光景をよく観察し、技術を学べば本物に近づけることができます。
書道ではそもそも、昔から筆づかいはもちろんのこと、観察するモデルとなる字形が統一されていません。原形(手本)を何にするかの時点で「このくらい」という曖昧な状態になっており、すでに誤差が生じています。
原形に誤差があるわけですから、それを見て写すときの誤差はもっと大きくなります。
こうして、誤差はどんどん広がるばかりです。そして、広まった誤差から師範がどんどん生まれていきます。
そのため、師範になったとしても「自分の字は下手に見えてしまうし、どう教えたらいいかわからない……」という悩みにつながってしまうわけですね。
以前、60歳の女性からこんな相談を受けました。
子どものころから書道教室へ通って師範を取得しました。現在、自宅で教えているのですが、教え方がよくわからず自信が持てません。
という悩みです。
何十年とずっと習っていても、彼女が通っていた会には小筆の手本がなく、師範といえばご近所から何かの折に書くことを頼まれてしまうので、そのたびに困っていたそうです(この方は現在、私のところへ入門しています)。
検定の課題の手本を見て、自宅で書いたものを送れば自然に昇段する。
そして時がくれば、師範の認定証を取得できてしまう。
こんな事例は非常に多いのです。
教えられる書道師範になるためには
これまで書いてきたように、師範になるには誰かのもとについて、それぞれの先生が行う検定を受ける必要があります。
書道師範になるためには、
- 書道教室や書道会に入って、誰か一人の書道師範につく
- 師範のもとで学び、技術を高める
- その師範が主催する昇段試験や検定を受け、あなた自身も書道師範として認定される
という流れで進んでいってください。
ただし、基準が曖昧な検定の場合、師範を取ったからといって、確実に人に教えられる自信がつくとは限りません。
そこで、師範を取る際には、以下のポイントをおさえていただく必要があります。
- 誰が教えても同じ教え方になるような、基準のわかりやすいお手本を見つける
- 誰に教えても上達させられるような教え方をしている先生(師範)につく
- 段位や師範の取得理由が、点数などで明確にわかる検定を受ける
一言でまとめるなら、「美しい字のポイントをはっきり正確に伝えられるようになる」ことが大事な点です。
書道の世界で広まっているぼんやりとした基準で師範を取ってしまうと、のちに自分が教える立場となったとき、同じくぼんやりとした基準でしか教えられなくなってしまいます。
そのせいで、自分の字に自信が持てないという悩みが出てしまうのです。
師範自身が書けなくなってしまうなんてことにならないよう、上の3つのポイントはぜひ気をつけてください。
まとめ
書道師範になる方法や注意点についてお伝えしてきました。
改めてまとめますと、
- 書道師範になるには、自分の師範から検定を受ける
- ただし、基準が曖昧な検定が多く、実力がないまま師範になることもある
- そのため、基準が明確なお手本と教え方を学んで、基準が明確な検定を受ける必要がある
というポイントが大事になってきます。
しかしながら、全国の書道塾や書道会で、このようなポイントをおさえて検定を行っているところはなかなか見当たりません。
私塾「優美舎」では、私自身が師範の在り方に疑問を持っていたため、研究を重ねた独自のメソッドを創り、教える基準が明確になるような稽古と検定を行っています。
(詳しくは下記↓のページにて紹介しています。)
「ひらがな」は46文字、「漢字」は40文字を、それぞれ具体的なポイントにまとめて添削のなかで解説します。何度も添削を重ねていくうちに自然にその文字が綺麗に書けるようになり、そして自然に人に教えられるようになるメソッドです。
検定を受けた場合は、採点を数字で明確に出すことができるので、段位認定の際には受験者に納得していただける説明ができます。
25年以上、多くの書道師範の方や師範志望の方をサポートし、みなさまに喜んでいただいています。
書道師範になりたい方、もしくはすでに書道師範を持っているのに悩みがつきない方……こういった方々の助けになれれば幸いです。
書道師範の取得に少しでも興味があれば、ぜひお気軽にご連絡ください。
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