今回は、優美舎の塾生、渡部綾華さんにお話をいただきました。
綾華さんは、もともと書道の経験があり、また書道を始めたいとのご希望で1年前から優美舎に通っています。
優美舎で再び書道を始めてからは、たくさんの良い変化があったそうです!
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優美舎との出会い
私は幼稚園から大学まで他の書道塾に通い、準師範の資格まで取得しましたが、大学が県外だったためお稽古に通えなくなり、15年間の書道歴がいったん途切れました。
そして、卒業後は地元に戻ったことで、一時期は父親が開いた書道塾を手伝っていましたが、別の仕事に就いてからは本業が忙しく、書道との距離は遠のいていきました。
その後、20年以上続けた仕事を退職し、自分自身の人生の再出発を踏み出そうとした矢先に、母が体調を崩し、要介護4の状態になってしまいました。
自分らしく生きるために退職したはずだったのに、朝から夜まで母の世話だけに追われ、誰とも会えない日々が続き、私自身が腰痛とイライラで心身ともに壊れ、次第に「介護うつ」になっていきました。
介護生活が1年たつ頃には、私自身が歩行も困難になるほど腰痛が悪化したため、自宅介護を終了し、母を介護施設にゆだねる決心をしました。
今度こそ自分のために生きたいと思ったとき、ほんの軽い気持ちで「また書道を始めたいな」とつぶやいたことが、優美舎との出会いにつながりました。
優美舎の「書道」とは
初めて優美舎のお稽古に参加して、まずその自由さに驚きました。
大きな毛氈(もうせん)に条幅(じょうふく)の紙を並べて、塾生が好きなお手本を選び条幅に文字を書いているのです。
入ったばかりの私も同様に、好きなお手本を選んで書かせてもらいました。
こんなことは、私の長年の書道塾の常識では考えられない衝撃的な出来事でした。
前に通っていた書道塾では、先生から与えられたお手本通りに1ヶ月ひたすら練習し、毎月決まった字を習って昇段試験や競書会に出品することの繰り返しでしたから。
そして、もう一つの驚きは、塾生同士のつながりの濃さです。
お稽古のない日にみんなでドライブして、美味しい物を食べながら大笑いする。この仲の良さ、温かさ、居心地の良さは何だろうと。
これもお習字の塾としてはあり得ないことです。
普通は同じ塾で習っていても、ある意味、誰が先に昇段するか、賞をもらえるかの競争相手でもあります。
それどころか、昇段には出品料の他に謝礼金がつきもので、酒席の接待などにも昇段の忖度(そんたく)が見え隠れすることを見聞きしていたため、塾生同士が垣根なしに仲良く過ごすなどあり得ないことでした。
だから、優美舎が競争ではなく、純粋に書道を極めることを目的にしている理念に心を打たれました。
そして、これこそが「習字」ではなく「書道」だと、わずか2ヶ月で確信したのです。
その感動に酔いしれる暇もなく、優美舎は「筆舞®」のイベントに突入しました。
私は、筆舞®の意味もやり方もわからないまま、その渦に巻き込まれ、興正寺、法福寺……と、嵐のような夏を過ごしましたが、その慌ただしく忙しい日々の何と楽しかったこと。
そのうちにパソコンでチラシを作ったり、空き部屋を書道教室にするために粗大ゴミを撤去し、壁紙を貼り、机と椅子を運び込み、作品をカーテンにしたりして、気がつくと週に4~5日は優美舎に通っていました。
介護で何もできなかった1年分を取り戻すかのように夢中になり、何をしても楽しくてたまらないのです。
今まで経験した仕事で身につけた「小技」がこんなふうに役に立ち、こんなふうに自分のやりたいことを実行できるなど、信じられないほどの充実感でした。
あれほど嫌で心を病んだ「介護」で得られた経験すらお役に立つことがありました。
私にとっての優美舎は、自分を取り戻すことのできた、感謝しきれない場所でした。
介護うつからすっかり抜けだし、自己実現のできるかけがえのない世界になりました。
優美メソッドの魅力
一方、書道としての修練はまだまだ発展途上です。
自分ではかなり長い書道歴を持っていますが、その年月で身につけ、人にも教えた筆使いとは優美舎はまるで違うため、一本一本の線の引き方、止めはね曲げの全てを覚え直さなければいけません。
これにはかなりの努力が必要で、四苦八苦しています。
でも、その作業は苦痛ではなく、新たな挑戦にわくわくするのです。
どういう動きをすればこの線になるかを考え、一度書いた後に「筆持ち」してもらい、その通りに筆を動かすと、線や字が一変します。その科学的証明に感動を覚えるのです。
私が今まで身につけた技術、筆使いは長年の習熟が必要で、「こうすればいい」と教えてもその通りの線を出すには何ヶ月も何年もかかります。
でも、優美メソッドの形や動きには科学と哲学があり、初心者でも有段者でも同じようにうまく書ける法則性があるのです。
この向きで筆を動かすとこういう線になるという法則のすばらしさと面白さは、「習字」を20年以上経験したからこそわかる醍醐味であり、優美メソッドは「習字」を「書道」に昇格させるものだと実感しています。
この優美舎との出会いは、いろいろな仕事や様々な経験や苦悩を体験した今だからこそ何倍も楽しめ、その価値が身にしみるのだと思います。
これからも優美舎のすてきな人たちに学びながら精進し、自分自身の可能性をさらに拡げていきたいと思います。
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綾華さん、貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございました!